2009年7月12日

ヨーロッパ退屈日記

ヨーロッパ退屈日記 伊丹十三 横浜関内伊勢佐木町のカフェバー 音楽好きが集まる洒落た飲み屋 ウェブ担当がオススメする書籍

辛辣を愉しむ

故 伊丹十三さんが若かりし頃、
ヨーロッパを旅した時の手記です。

『マルサの女』『ミンボーの女』『スーパーの女』の監督としての
彼しか知りませんでしたが、俳優、デザイナー、イラストレーター、
さらに作家としての顔もあったんですね。

ヨーロッパの国々の好きな点、嫌いな点、
それに呼応して再認識される日本の良さ悪さ。

そして何より、少々毒の盛られたユーモアで、正当な服装やマナー、
グルメ話、酒をベースにして、嫌な人間、粋でない人々を分析します。

金持ちの優雅さと、貧乏人の僻みが入り混じってなんとも愉快、辛口な嫌味の数々

憧れの大人ってのは、こんな風なカウンターパンチをサラっと放って、
なおかつ、場の空気を汚さないのでしょう。

本書を、どのジャンルに分けるか悩みました。
グルメにするか、生活習慣にするか、小説でもイイような気がするし・・・
でも、やっぱり、愉快な文体に学ぶべきことが多そうなので、
文章術に入れちゃいました。

人をクスっと笑わせるような文章はこんな具合。
皆さんの周りにもいる、恐ろしいことにあなた自身かもしれない、こんな方々・・・

車を持っていない筈だのに、
あるいは、ダットサンに乗ってる筈だったのに、
どういうわけか、ベンツのマークのネクタイ留めをしている。
(これはミドル・クラスだねえ)

ただし、ベンツに乗ってる奴が、
ベンツのマークのネクタイ留めをしてたら、
もっとミドル・クラスだろうが。

※用語解説 「ミドル・クラス」
本書では、庶民が背伸びしてワケもわからず、本質を見失って
上流階級を目指している様子を指す。
当然、小バカにした蔑称 みんなの職場でも流行らせよう!

スキーには、一度だけ行ったことがあるという。

「あそこのCコースってのがあるでしょう。
あそこでね、行った日に初めてスキー履いてね、
いきなりチョッカッちゃったんだけどね、
何しろ停まれないの、曲れないでしょ、
ウワーどいた、どいたってどなりながら、
もろにブッシュに突込んじゃった。

したらね、お前みたいな心臓見たことないだって。
でもね、素質あるっていわれましたよ、ボク」

ヤレヤレ、初めてスキーを履いた人には誰でも
「素質がある」っていってあげるものなんだ。

※用語解説 「チョッカる」
スキーやスノーボードで、直滑降(真っ直ぐ滑り降りるので最高速が出る)で
滑るスタイル。 スピードが出ても、確実に停止できるという条件が付随するため、
シンプルながら上級者の技。
対義語はスキーならボーゲン、スノーボードなら木の葉落としなどなど。

ちなみに、上級者がこの言葉を自慢気に発している場面には遭遇したことがない。

麻雀で大きな手をやっている時、人が安く上がると、
自分の手を倒して説明しないと気が済まない。

ホラ、ちょっと、見てよ
イーシャンテンで、チンイツトイトイ、三アンコにドラ三でコツコツ、
親の倍満逃しちゃった。

いや、親のダブル倍満かな、チンイツでしょ、トイトイでしょ、
三アンコにドラ三のコツコツと、こりゃやっぱりダブル倍満だ、
うわぁ、親のダブル倍満逃しちゃった
三万六千点、千八百円」

一体、男の誇りはどこにあるのか
男ならやせ我慢で押し通すべきではないか。
忍の一字、これがダンディズムというものではないか。

「ウワァ、千八百円」とは一体どういう了簡かね。
とてもポーカー・フェイスどころではないのである。

※用語解説 「倍満」(ばいまん)
高得点のこと 安く上がろうが高く上がろうが、最終的に1ゲーム内での
総合得点で勝敗が決まるものなので、数値上は、どちらがイイ悪いってのは無い。

ただし、麻雀では"安く上がる派"(ハト派)と"高く上がる派"(タカ派)が
真っ二つにわかれ、160年以上も論争が続いている。

"安く上がる派"の言い分は、「勝てば官軍」
"高く上がる派"の言い分は、「麻雀の醍醐味をわかってない」

これによる殺人事件も起きてるハズですよ、きっと。

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