2010年6月 8日

勝つための状況判断学

勝つための状況判断学

経験から得る
バランス

軍隊に学ぶ戦略ノート

著者は、元自衛隊の幕僚、松村劭 (まつむら つとむ)さん。

目的からのアプローチ (何をすべきか?)と、
可能性、現実性からのアプローチ (何ができるか?)、このバランスの解説。

歴史上の戦争、戦略、戦術を分析しているが、それは後付けに過ぎない。
話もアチコチに飛ぶので、まとまりが無く、
漠然とし過ぎているので、ビジネスシーンでの応用も利かない。
なので、本書は地政学と国民性の関係を探る方面の読み物として楽しみたい。

色々こねくり回しても、結局、経験の蓄積でしか解決しない、
というコトだ。

2010年1月20日

サイゾー 2009年 12月号

サイゾー 2009年 12月号 押井守 表紙画像

監督自身が
「何も無い」
という映画

押井守監督へのインタビュー。
自らが監督した、黒木メイサ主演の『アサルトガールズ』は、
中身が何も無い映画だそうだ・・・

オマエら、イケメン1個小隊がいりゃ何でもイイんだろ!?
的な、映画やドラマ作りの現状を小バカにした話は笑えますっ!

2009年4月 5日

半島回収

半島回収 横浜関内伊勢佐木町のカフェバー 音楽好きが集まる洒落た飲み屋 ウェブ担当がオススメする書籍

聞き漏らすな!

著者は、溝呂木省吾さん。
コレがデビュー作らしいのだが、
金正日や北朝鮮の軍事モノを小説にすると、
どれも似通ってくるのだろうか。

話は『半島を出でよ』を短くして薄めた感じ。
大筋は現実的だが、出来事のタイミングは非現実的。
ミサイル問題で右往左往している今だからこそ、読める内容だ。

北朝鮮の影で糸を引いてる"アノ国"や、経済力に群がる諸国の筋書き。

情報を聞き漏らしたりってのは、日常でもありがちですが、
聞き逃した意味に後で気が付く、
ということは、本書を通して再認識できます。

小話

天皇のコトが大好き! って方が読むと、
少しだけ、視野が広がるかも・・・ 無理か。

そして、さらに小話、
潜水艦は自ら音を出すような真似はしないだろう。

何故なら、音紋が採集されてしまうから。
例え悪ふざけであっても、後々の不利益を考慮したら
そんなコトは気軽にしないものだ。

無料で本書 『半島回収』をプレゼント

2009年1月28日

自衛隊 vs 中国軍 超限戦勃発!

自衛隊vs中国軍 超限戦勃発! [別冊宝島] 宮古島
石垣島が
占領された!

どうも! 皆さん軍備に勤しんでますかっ!

オバマが大統領に就任して、「イェーイ! ピース!」
とか浮かれてる場合じゃない。

アメリカも(中国もロシアも)軍需産業で生き残りをかけるのは必至であり。
いつも通り、内政の不具合を目立たせないために、外部に仮想敵国を作るであろう。

本書では、仲違いしていた中国と台湾が、
どうやら友好的になってきている。という推測を基に
日本 vs 中国&台湾の構図で
宮古島、石垣島、西表島へと侵攻される戦況をシミュレート

P.7
日本人は、とにかく外交関係に幻想を持つ。
国と国との付き合いの基本原則となるものは、
友愛ではない。国益である。

日本も多少の危機感があるのか、
「防衛計画大綱」も三度目の改訂作業に突入したようだ。

2009年1月27日

雷轟(らいごう)ローリングサンダー / パックスヤポニカ

雷轟(らいごう)ローリングサンダー / パックスヤポニカ 押井守 もうモヤモヤ
ボケない!

何となく勝ち続けてしまった
戦争があるから、今現在の日本は
何となくボヤけているのだろう。

東京での生活も長かったので、友人から
「こっち(東京)へ帰ってこないの? 帰ってくればイイのに・・・」
と、しょっちゅう聞かれます。

なぜ、ウェブ担当は大都会から我先に脱出したのか・・・
サブ的な理由として。

  1. ネットである程度仕事が完結するようになった
  2. 呑みや遊び、各種誘惑が多い
  3. 空気の悪さや臭気がキツイ
  4. 都税で身内を肥やす石原慎太郎が嫌い

そして、メインな要素としては。

  1. 大震災の時に助からなそう
  2. インフルエンザ等、各種疫病が流行るのが早い
  3. テロのターゲットが多い
  4. ミサイル攻撃された時にヤバい

核弾頭を積んだミサイルや細菌兵器、空爆の可能性はゼロではないわけで・・・
以下の国の人々が嫌い、とかではなく、
各国政府が何を画策中か知れたもんじゃない。
可能性としては、北朝鮮、中国、ロシア、アメリカ、韓国、台湾・・・等の近隣諸国。

代理戦争は抜きとして、ヨーロッパや長距離からの直接攻撃の可能性は低いので
小脇に置いておくことにする。

勝てば官軍である、戦勝国になる者たちは、
勝利の旗と、正義の旗。
同時に立てれなければ意味がない。

アメリカの南北戦争を起点とした、架空の物語を通じて、
自前でこしらえた建前の正義を考察する。

ここ数年に展開された、幾多の紛争を思い出すと、
"建前の正義"を抱えた危なっかしい国々が、いかに多いかわかるだろう。

本書の第2テーマ、
軍事性を意識した都市計画 は、成されているか?

押井守さん曰く、「民主主義」や「自由」の存在は、
「戦闘市民」によって確立される。そうだ。

戦争を体験した市民ではなく、自らが交戦する戦闘市民。
この平和ボケとヘボ外交は戦闘市民じゃない故。

犯罪発生率や地盤の性質以外にも、
あなたが住んでいる場所を、軍事面という大枠で再評価するよい機会だ。
(住民の団結力、土地の風向きも考慮すると尚良し)

南北戦争を境に、アメリカが二分割されていたら・・・
第二次世界大戦後の日本はどうなっていたのか? を軸として話は進行。

ベトナム戦争の章、日本軍爆撃屋の軍事小説は、兵器の細かい描写、
巻末には岡部いさく氏の解説付き。

2009年1月15日

半島を出よ

半島を出よ 特技が発する
一瞬の輝き

物語が小分けにされているので読みやすい。
平和ボケしているようなら読んでおいたほうが吉。
イザという時、パニックが軽減される。

それに、何かを犠牲にして
何かを守らなければならない状況になった時、
慌てずに済むかもしれない。

各章のタイトルはあえて見ないこと。
ドキドキが薄れてもったいない。

物語内の状況は、執筆時より現在の方が近くなっていて、
貧乏で捻くれて、危なっかしい日本が舞台。

様々な組織単位が出てくるが、
多くの資料や取材を積み重ねたのだろう、
物事は現実に沿って進んでいく。

物流の重要性、政治家や官僚の態度、死との遭遇・・・
対立という環境を通し、最優先事項を決定する大切さも提示される。

作品を通して、ビジネス面や普段の生活で取捨択一する時に
役に立ちそうな教訓も語られている。

平時でも緊急時でも、いつでも教訓は、
少ない情報、些細な兆候を見逃さない
ということであり。

いつ、どのタイミングでリスクを取って、犠牲を出すのか思案することが
その後の命運を分けていく。

何かを選ぶコトと、何かを捨てるコトの差は同じかもしれないし、
そもそも、この"何か"が決まっているのかいないのか、
そのことが柱になってくる。

『13歳のハローワーク』の直後に執筆されたというのもあり、
「オマエら・・・ 好きなコトやってていいんだよ」
という村上龍さんの声が聞こえてきそうだ。

"経験していない"という恐怖が見え隠れしつつ、
突飛な登場人物は、限りなく突飛していて、
魅力的なキャラに仕上がっている。 (若干、登場人物が多過ぎるが・・・)

子どものように自由な世界と、
大人のリアルな現実が入り混じりながら話は展開してゆく。

『AKIRA』『グーニーズ』『ぼくらの七日間戦争』『バトル・ロワイアル』
のように、笑い、涙、暴力、権力、恋愛、青春、戦争。
キラキラとドロドロが混ざったごった煮感覚を味わいたい方にお薦め。

2008年12月20日

TOKYO WAR

TOKYO WAR 押井守 今も、
いずれ無くなる

土木建築に使用される特殊車輛が発達し、
人型作業機械となった近未来の日本、
現実的にはどんな状況になりそうか?

そんな舞台設定の映画、『機動警察パトレイバー 2 the Movie』
で、押井守監督が描ききれなかったシーン、
尺に収まらなかった人間模様を書いた、ディレクターズ・カット版ともいえる小説。

篠原重工 八王子工場での描写、違う居場所へ散らばる同期、機械への愛着・・・

大好きなブチ山先輩の登場シーンが削られていたり、
後半にゆくほど、書籍としての尺が足りなくなってくる感覚は
少しもったいない、とも思えるが・・・

深く考えなくても回る生活、楽しい日常は過ぎ去り、
その時々で創りあげてきた仕事や仲間との関係、チームの緩やかな分離。

端から観たら崩壊ではないかもしれないが、
そこには今までとは違う違和感がある。

同じ目標を持ち、同じ方向へ向かっていた戦友と過ごす
2度と戻らない日々
その状況は場所と時間を変え、繰り返すのか?

食事、ロジスティクス(物流・後方支援)と油、
会計処理の側面からも戦争を観察する。

そして、"敵を持たない軍隊"はどうなってしまうのか。

2008年10月16日

対立からわかる!最新世界情勢

対立からわかる!最新世界情勢 世界のゴタゴタを
立体的に掴む

世界の動きに興味がない方も、この手の会話になった時に、
何も発言できないのは、
大人として取り残されてる感
があるので、本書でこっそりお勉強。

下記、1章~7章の中に各々9つほどのテーマが入っていて、
全てに3つの見解を提示。

  • 1章:環境と資源
  • 2章:民族・宗教の勃興
  • 3章:テロとの戦い
  • 4章:グローバル化の諸相
  • 5章:国際機関と地域主義の動態
  • 6章:開発途上国の貧困
  • 7章:世界の中の日本

対立意見を、「対立説1」「対立説2」に分け、
両方の主張を取り入れた中間的意見を「有力説」として解説。
おまけに、用語解説までついていて、なおかつシンプルな
図解なので読みやすい。

新しい冷戦の始まり、
世界が変化してゆく模様を
日本の立場、国益にフォーカスして読み進めると理解が深まる。

国連の通常予算て、約19億ドルと、意外に少なかったんですね。
ちなみに、米国政府の予算は約6073億ドル。
東京都の予算は650億ドル。 沖縄県の予算は56億ドル。

テロによる攻撃の犠牲者割合。
軍関係者が1人犠牲になるのに対して、
民間人はその10倍の人数が犠牲に。

P.26
イデオロギー対立で押さえ込まれていた民族・宗教対立が
顕在化する様相は、「文明の衝突」と呼ばれます。

これらの対立は、権力や資源を奪い合うための
支持基盤強化へ向けた演出に過ぎない。という側面もある。

P.36
少数民族の独立運動の活性化で
中国は分裂するか?

多民族国家中国が抱える民族衝突、
漢族が自治区に流入して問題に。
沿岸部と内陸部の開きすぎた格差も原因となり、
本当に分裂するのか。

安保理(安全保障理事会)、WTO、IMF、世界銀行、
NATO、SCO(上海協力機構)、ASEAN+3、
開発途上国を騙る(自認する)という戦略・・・

いつの間にか、あたりまえのように存在していた
様々な(中には胡散臭い)組織の設立理由を探る。
いったい誰に利益があるのか?

2008年9月 3日

SAPIO 腑抜けたテレビ

SAPIO 腑抜けたテレビ 腑抜けたテレビの
日本人低脳化計画

たわいもない感想を述べ合い、
公共電波の私物化と、自殺方法の手順公開の大問題。
朝から晩まで垂れ流される通販番組の甘すぎる汁を分析。

政府やメーカーの収入に繋がる地デジ、
すでに放送ビジネスの崩壊が始まっているようなので、
高額ギャラ出演者や、テレビ局自体が嫌いな人は
この機会にテレビから足を洗うという選択もある。

その他には、アメリカの差し金によるグルジア紛争、
中国ウイグル族の地獄や、学校給食の変な組み合わせによる弊害を考える。
(味噌ラーメン&アンドーナツ&くだもの&牛乳や、
生クリームサンド&焼きそば&牛乳 等)

なぜ国民がチューナー代金を負担
しなければならないのか?

P.12 鬼木甫氏
政府が国策として放送を停めるというのだから、
そのための費用を補償するのは当然である。

ほとんどの人は10年程度使うことを前提にテレビを買っている。
その個人財産であるテレビを
国家の都合で無価値にしてしまう
というのがアナログ停波なのだから、国家が補償するのは当たり前なのだ。

停波による受給者は誰? と、金の流れを考えると勝手な都合が浮き彫りになる。
地デジにしない人は、自力で毒電波を止められるワケではないのでこれまた困る。

給油法ゴリ押し解散?

P.28 サピオ政界特捜班
それにしても奇妙なのは、福田首相の「アメリカ擦り寄り」である。
給油法をごり押ししようとするのは、前述のように禅譲を狙う麻生氏を牽制する
方便という意味ももちろんあるが、
もともとはアメリカに要求されてやっている政策である。

国民がガソリン高にあえぎ、
それで大儲けしているのが
アメリカの石油メジャーだというのに、
「日本人の税金を使ってアメリカ軍にタダで給油する」という
同法には国内の反発が根強い。

消費とは何か? その悪とは?

P.65 小林よしのり氏 
最近、浅羽通明の『昭和三十年代主義』を読んだ。
その中で印象に残ったのが、福田恆存の
「人間は生産を通じてしか附合へない。
消費は人を孤独に陥れる。」
という言葉だ。

浅羽はこう書く。
「生産において人間は、何らかのかたちで部品となり、
また多かれ少なかれ損得計算で動かざるを得なくなって、
必要性が主、感情はその従となります。
しかし消費は一人でだってできる
好きな人と映画を観たいとか、
気の合う友人たちと旅行したいという。
場合も、あくまで感情が主で全てです。

そこには人間が否応もなく『附合わさせ』、
結びつけられる義理はないのです。」

『ALWAYS 三丁目の夕日』で話題になった昭和30年代は、
「家族」も「生産協働体」だった。
夫も妻も労働していたし、子供も家の手伝いをさせられていた。
今のように子供だって消費するだけのマスコットじゃなかったのだ。

       (~中略~)

昭和30年代は、あくまでも「生産協働体」の中で
相手の労働力が必要だから付き合っていた
のであり、従として、「人情」も「愛情」も育むことができたのだ。

生産と消費という言葉には、真逆の意味があり、
表裏一体かと思っていたけど、感情が全てとなってしまう
消費という行為について、真面目に考えてもイイ時期だと思った。

チベット、ウイグルの地獄

P.87 茅沢勤氏 ある外交筋の話
「中国は『反テロ』と言って近づいてくる米国の情報機関を
受け入れつつも、彼らが中国内部に浸透することに強い懸念を抱いている。
少数民族の独立運動を裏で支援して、中国共産党による一党独裁体制を
崩壊に導き、民主主義化するという動きが現実化することになりかねない
と警戒している」

同筋はこう分析し、米中の「反テロ共闘」が招く恐ろしい結果を予言する。
「『反テロ』という"お題目"を唱えて米国と協力すると見せかけつつも、
中国政府は国際社会が見ていないところで、チベットやウイグルなどの
独立運動を徹底的につぶそうとするのは間違いない。
それが、かつてのナチスによるユダヤ人虐殺につながるような結果に
なろうとも厭わないだろう」

竹島、尖閣諸島危ない兆候。
場合によっちゃ対馬や石垣島や沖縄もブン盗られるかも・・・

P.93 水間政憲氏
今回、竹島と尖閣諸島が掲載されている韓国や中国で発行された地図帳
などを古書店で探し回っていた中で、気になる話を耳にした。
これらの地図をつたない日本語をあやつるアジア人たちが探し回って
いるというのだ。

専門書の店主は、「日本語はあまり話せないが、しかしお金には
糸目をつけない。韓国人か中国人ではないか。
最近は地図帳だけでなく、中国で発行された古い本であれば、
当たり構わず買っていく。支払いはすべて現金です。」
と右手で数百万を表現した。

航空自衛隊のレーダー基地、イージス艦が収集するデータの中継基地と
目と鼻の先、九州、五島列島の姫島もヤバい。
国防要衝の島が買収されてる?

P.97 恩田勝亘氏
「防衛の要衝は
商取引に規正を設けるべき」

日本の防衛当局にとっては外国企業の手に渡っては不都合な場所である。

       (~中略~)

民間企業の正当な商取引を批判はできないが、
交渉の成り行きには日本人全体が関心を払うべきだろう。

「戦前、日本人が米国西海岸へ移民し、土地を買うことに米国人の
反発がありました。土地が外国人の手に渡るというのは、
常に神経を逆なでされるものなのです。

まして東シナ海という国際的に微妙な問題を抱える地域が、
私有地とはいえビジネスとして無原則に取引されていいものか考えるべきでしょう。

県レベルでは対応できない問題であり、防衛上の重要地域には
国として何らかの規正が必要です」(志方俊之・帝京大教授)

日本周辺には姫島同様、無人の島は無数にある。
その多くは姫島のような「資産価値の高い島」ではなく、
それだけ簡単に買収できることになる。
仮に中国などが国家戦略として日本の辺緑地域を次々と支配下に入れることに
なれば、軍隊を使わずして「ハワイ以西は中国」
の野望を実現できる。日本の防衛当局は、一刻も早く対策を立てるべきだろう。

2008年8月30日

戦争のリアル

戦争のリアル 「敗けたから
しょうがない」
じゃ、済まされない

日本に足りない、戦争総括(第二次世界大戦)の重要性。
自衛隊の装備、兵器のディテールから戦争へと話を広げる。

兵器に詳しい人も、詳しくない人も、ネット検索片手に
読破することを激しくオススメ。

敗者の安逸にひたり、キレイ事を言っている場合ではなく、
しっかりとした防衛体制、戦略論が必要。

  • コミュニティへの帰属意識が戦争にどう影響するのか?
  • 戦争の勝利条件とは?
  • ナウシカの「風の谷」=日本?
  • RPG-7が自衛隊の最悪の局面を救ってくれる?

アニメの監督として、いち納税者として、必要な装備、
アメリカに騙された買い物を押井守監督と、
軍事解説者の岡部いさく氏が斬る!

妄想からスタートする兵器運用。
現実と妄想の境目の戦争についての対談。

戦争を語らない時に支払わされる、高くて重いツケとは?

押井:
太平洋戦争になった途端に兵隊を湯水のように消耗した。
なぜそういう変化が起こったのか。
僕に言わせれば、それは日露戦争を正確に語らなかったから。
戦争を語らないということのツケは、
必ず後世の人間の血で払うことになる。

戦敗国のその後、戦勝国のその後

押井:
やっぱり敗者であることの居心地よさにみんな涙してるだけ。

ルーザーであることのほろ苦さと自己憐憫(れんびん)の世界に
浸ってるほうが楽だから人間はルーザーになる。
ルーザーであることのほうが容易なんだ。ルーザーであることの、
敗者であり続けることの誘惑に勝てない。
日本は戦後60年間、敗者であることの言い訳に屈し続けた。
勝者になるっていう可能性は追求しなかったんだよ。

アメリカはいまだに勝者たることのツケを払い続けてる。
僕はいま現在、どちらかと言えばアメリカのほうに同情的。
ちょっかい出し続ける以外にアメリカっていう国は存続できないんだから。
外部っていうものが存在して、初めてアメリカはあり得るわけだから。
とりあえず外部を創り続けるしかない。

かつてのソビエト、ナチスドイツがそうだったように。
軍事っていうもので成立する国家というのは、
北朝鮮からアメリカに至るまでみんな同じ、
外部を創り続ける以外に国家を存続できない。

アニメ、ゲーム、漫画の中は戦い(戦争)を題材としたものが多い。
そこから日本の状況についての切り口をはじめる。

押井:
僕はどちらかでいうと、現状を政治として語るとか、自衛隊そのものを語るとか、
軍事レベルで日本の国防政策を語るとか、そういうことはとにかく置いといて、
日本人が持っている戦争文化そのものを問題にしたい、
そこから下ろしていって各論を語ると意外に正解に近づくんじゃないか、
分かりやすいんじゃないかと思ってるんです。

戦争の勝利条件から見る、アメリカのやり口。

押井:
必要十分条件は何かって言うと、相手の国の権力者もしくは戦争行為の当事者、
最終的には国民自体を銃剣の間合いに収めること。
要するに占領するっていうことなんだと。
占領を伴わない戦争の終結っていうのは基本的にあり得ない。
その前に敵が「参った」すれば別だけど。

その小銃の間合いに収めるということなしに、相手に参ったを言わせることが
アメリカのテーマになっている。間違いなくそうなんだ。
イラクではそれに失敗したわけだよね。

フセイン政府を叩き潰して、フセインの野戦軍を殲滅することはある程度可能だった。
だけどそこで引き上げちゃうと、第二第三のフセインが出てくるだけで
もとの木阿弥だと。
撤収した瞬間、またアルカイダがどどーっと入ってくる。
「テロとの戦い」っていう彼らのテーマから言えば、
あのへんの中東地域の国家を軒並み
アメリカの言うところの「民主国家」に改造する
つまりアメリカのスタンダードに変えるっていうことが、最終的には目的なんだよね。
それにはやっぱり暫定行政機関だけじゃなくて、最終的には国民の総選挙に基づく
民主政府を作って自立させない限り、戦争の目的は果たせないわけだ。

湾岸戦争時、イラクへ持っていかなかったモノ

押井:
戦車を持っていかなかったのもいまだに納得いかない。
戦車は確かにオーバースペックかもしれないけど、政治的な意味があるから
90式を持っていくべきだった。僕がいつか『226』(戦争を語るイベント)で、
なぜ90式を持っていかないんだってわめいたけどさ。
あれがあるだけで襲撃しようというゲリラの戦意を大幅に削げるだけじゃない。
90式が実際にどこまで使いものになるか試せるのは当然大きいですよ。

岡部:
だから四輌くらい持っていって、宿営地に置きっぱなしでもよかったんですね。

押井:
そうですね。僕はそう思う。

岡部:
三日に一度、50メートル走らせるぐらいでもよかったかもしれない。

       (~中略~)

押井:
宿営地に四輌ぐらいパークしてるだけで相当な抑止能力がある。
もちろんいざとなったら、そこをトーチカにして撃ちまくればいい。
実際に榴弾までぶっ放すかどうかは別としても。
持ってるところを見せなきゃいけないから、たまに撃てばいいんだよ。
公開訓練でもやって「ウオー」とか言わせればいいんでさ(笑)

自衛隊の装備に関する不明点

押井:
アメリカが出した結論が、ベトナムで大活躍したグレネードランチャー。
あれは革命的な技術だった。要するに冶金技術が上がったんで、薄くて軽い
擲弾筒が造れた。あれはいまだに現役だもんね。

擲弾筒なるものがなぜ必要だったのかといったら、
小銃で撃ち合って決着のつく戦闘は、
敵味方どちらにとっても耐えがたいものだから、
要するに短機関銃とガーランドを撃ちまくるっていうのは、
それは『コンバット』の世界だけ(笑)

日本の自衛隊って、そういうところをどう考えてるんだろう。
おそらく日本の64式から89式っていう流れは、
漠然とそういう戦術的用途を満たしてるん
だろうとは思う。でも遅滞戦闘をやってる間にどうするつもりなのか。
最終的に敵の歩兵部隊を殲滅させる手段はいまだに持っていない。
89式小銃の下にグレネードランチャーをつけるっていう発想はなぜないんだろう。
金がないから?
でも量産すれば擲弾筒ってのはじつは非常に廉価な兵器なんだよ。
なぜやらないんだろうかと、これも長年の謎。

ハンビー(大型四輪駆動車。民間仕様はハマー)と比較した
センターピラー(フロントガラス中央の支柱)の無さ。

押井:
トヨタメガクルーザー、あれもふざけた話で、
民生に落とすことを考えて設計してるじゃないですか。
だからセンターピラーがない。センターピラーあるかないかは軍用の世界では
ものすごく大事なことで、弾が一発当たったら、センターピラーがないと
たちまちフロントガラスが蜘蛛の巣になっちゃうわけ。
高速弾だったら穴が空くだけかもしれないけど。

いずれにしてもピラーがあるから半分は確保できる、
それを考えるのが軍用ってものなんであって、民生に落とすからはなっから
センターピラーは設計しなかったなんて、そんなふざけた話があるかと
いうことなんだよね。
兵隊のことをなんだと思ってるんだと
一方で世界一高いトラックをいまだに使い続けてる。
逆にあんなのは民生用でも全然オーケーじゃん。
あれが戦場へ行くわけじゃないし、仮に行ったとしても軍用か、
民生用かっていうのは大差ないじゃん。道路があるところしか行かないんだから。

銃でも戦闘機でも、武器の基本。
弾が当たる予感がするか、自分の身体にしっくりくるか。

押井:
それもこれも、「戦争のリアリティ」ってやつなんだ。
だからその戦争のリアリティの中身ってなんだと言ったら、
「勝つ予感」のこと。
勝つ予感がしない軍隊は、その時点で役に立たない。
勝つ予感だけ大量に注入するとどうなるかといったら、それは北朝鮮になる。

地形による、現実感の違い。

岡部:
北ヨーロッパってのは戦争のリアリティにどっぷり浸かり込んでますね。

押井:
ポーランドなんかまさにそうだよね。東西が必ず通過するところだから。

岡部:
そうそう(笑)

押井:
どっちから来るのでも必ず通る。

アニメ、漫画、映画、モデルガンにおける、社会的な回路の断絶。

押井:
追究して、それにお金を使おうっていう人間がけっこういるからこそ
商品化されるわけで。
それはある意味では戦争のリアリティを無意識に欲しているという願望の表れの
ひとつには違いない。だけど、逆にそういうところで消費されちゃってて、
勝つ予感につながる回路がまったくないんだね。
いくらサバイバルゲームをやったって、勝つ予感にはつながらないんだって。

僕はサバゲーは大嫌いっていうか、あんまりやる気はしない。
それだったら金をためてグアム行って、一発でも撃てばいいのに。
ガーランドだろうが、M16だろうがAKだろうがなんだってあるんだから。
ショットガンだって撃てるし、MGまであるんだから、とにかく撃てよって話なの。

――:
日本人は内面に抑え込んでいくのが得意ですよね。
例えばミリタリーのディオラマなんかでもものすごく細かく作り込むのなんて、
その典型でしょう。願望を外に出さないで心に押し込めていくという。

現実に沿った、文化的な落差。

押井:
要するにすべての戦争のリアリティが虚構のレベルで消費されている。
アニメのマニアと一緒で、「今度のガンダムはミリタリー的に評価できる」とか、
そういう会話になっちゃう。

岡部:
戦争ってものを、いつもファンタジーとか物語の世界に、棚にひょいっと上げて、
そこで下から眺めて「あー、面白いね」っていうような、日本人の『平家物語』とか
『忠臣蔵』とかに対する伝統な姿勢じゃないですか。

押井:
ああ、ありますね。

岡部:
文化の中の戦争の位置づけというか、
棚に上げて眺めちゃうっていう。

押井:
それは日本に「市民」がいなかったからだっていう話だね。
「市民」というのはヨーロッパでは「武装」しているのが当たり前。
武装した人間のことを「市民」って呼んでるわけで。
それはギリシャ以来の伝統で、納税義務と武装する義務、
これがあって初めて「市民」と呼ぶ。
だからこれがない人間に選挙権がないのは当たり前だっていう話。
だから女、子供はもちろん、かつては老人にもなかった。
壮年だけが国の命運を決する選挙権を持った。

日本にはそういう「市民」の伝統が皆無なんだよ。
江戸開城のときだって、江戸の町人たちは高みの見物をしてたわけで。
そういうレベルで言ったら、
「市民」レベルでの戦争を体験したことがじつは一度もない。

だから太平洋戦争っていったって、これもある本に書かれてたんだけど、
山間部の農村から応召された人間のなかで二、三人が帰って来なかった、
という以上のあらゆる戦争経験がない。

東京とか大阪とかで空襲を体験した人間は、それなりにいるかもしれない。
でもそれは結局、天から降ってくる災厄でしかない。
米兵の姿を見たわけではない。占領軍が来て初めて米兵の姿を見た日本人が
ほとんどで、兵隊に行った人間だって全部が米兵を見てるわけじゃない。
実際にジャングルで米兵を目の当たりにした人間なんて、
数えるほどしかないはず。それを戦争の経験って呼んでいいのか。

それよりも、もしかしたら、毎月一回防空壕に飛び込む訓練をしてることの
ぼうが、戦争の体験と呼ぶにふさわしいんじゃないか。
ロンドンの市民で地下鉄に走り込むっていう訓練をしてない人間はいない、
かつてはね。いまは分からないけど。
僕なんかは、戦争体験っていうのはそれを指すんじゃないかっていうふうに
思うんですよ。

だからいまの日本で、個人で求めてどんな戦争体験が可能なんだろうか。
傭兵に行って銃を持ったとしても、果たしてそれを戦争体験と呼ぶのか。
それは他人の戦争に給料もらって行っただけであって。
自分の国土で自分の庭で、銃を持って逃げまわるっていう経験を戦争体験と
呼ぶんじゃないか。もしくは見知らぬ国に下ろされて、今日からここで
戦うんだと宣言されて、生きて帰る保証がないと言いきられたときに、
初めて戦争体験と呼ぶんじゃないか。

だからじつは日常の世界でも戦争体験が僕はありうると思っている。
別にグアムに行って突撃銃を撃ちまくらなくてもそれは可能なんだ。
だけど、防空訓練どころか地震訓練すらほとんどやってない国で、
どんな戦争のリアリティが可能なんだと言われるとたぶん何もない。

島国であることの危機感の下落。

押井:
日本人でいることに苦労なんていらないですからね。
たまにワールドカップとか、オリンピックとかない限り、
「日本」っていう言葉に反応しないし・・・
反応するのがいいわけじゃないんだけど。
でも日本にいることによって自分の生命・財産が守られてるってことを、
意識しないですんでますよね。
しいて言えば納税通知書を見たときだけ(笑)
「あ、俺は確かに日本人だ」って。
少なくても国家の側は僕を忘れていない、それは納税者として、だけど。

ところが、例えば物好きにもアフガンとかに行って誘拐された途端に、
余計なことしやがってと言われちゃう。
たぶん大使館は何もしてくれないだろうし。
山田正紀さんもそう言ってたからね。山田さんはアフガンかどこかで
警察に捕まって放り込まれたとき、大使館から本当にゴミ扱いされたって。
ただのバックパッカーごときはね。

映画監督が行ったって、役者が行ったって同じだけどね。
役人が来ない限り、大使館の人間なんて何もしないから。
それでいったら、ふだんは忘れてても、
国家は納税者としては忘れていない
それ以上でも以下でもない。

岡部:
裏を返せば、気を抜くと途端に日本人でなくされちゃうという危機感がぜんぜん
日本人にはないわけじゃないですか。うかうかしてると東からロシア人が攻めてきて
「お前らロシア語しゃべれ」とか、「ロシアに税金払え」とか、
「皇帝の言うことを聞け」とか言われることはないし、
西からドイツ人が来て家畜を持っていかれちゃうとか、
日本人はそういう目に遭いませんもんね。

押井:
それでいえば、厳密な意味で占領されたこともないしね。
占領統治というのはほんの一瞬あったけれども。ご丁寧なことに、
いいものをいっぱい置いていってくれた
って思い込んでるし。

このまま能天気にずっと存続してればいいじゃんっていう発想は
当然あるだろうね。でも、本当にそうやって能天気に存続できるのかというと、
けっこう怪しいんじゃないかなと。

メディアに騙されるな。

押井:
実際、政治レベルとか経済レベルだけでは、
国の危機意識っていうのは絶対語れない。
自分がそっちの世界にいる人間だから、余計そう思うんだっていうことになるかも
しれないけど、それだけじゃない。

日本人は文化的に保護されているっていう危機意識がないんだよ。やっぱり
中国のキャンペーンに乗せられているんだよ。
日本人の何割かは確実に中国の宣伝にやられてるよ。
中国の市場なしに日本の経済は成り立たないんだって、本気で信じてるやつは
いくらでもいる。たぶん政治家とか経済人とかでも。これも宣伝のひとつ。

僕に言わせれば、あんなものなくたって全然OKだよ。
アジア中に護衛艦を売ったらいいんだとかさ、そういうふうについ思っちゃう
んだよね(笑)護衛艦とヘリコプターは売り物になる。
あとは潜水艦もいけるかな。飛行機はちょっとダメっぽいけどね。
ライフルもダメだろうねきっと。

日本はアニメとゲームだけじゃないんだよ。
それがいいかどうかは別として。でも、中国市場がなかったら日本経済は
立ち行かないんだって幻想を信じるくらいだったら、そっちのほうがよっぽど
マシだろうと。実際いらないもん

いつから具体的な考え、現実感を無くしてしまったのか。

押井:
日本に存在するのは言葉のリアリティだけ。
僕が言うのもなんだけど。

岡部:
日本人ってそれこそ模型を作ったりとか、手先は器用で非常に具体的なものが
好きなのにね。なんで具体的に考えることは苦手なんですかね。
これは江戸時代の朱子学の影響?
あれは何か抽象的にものを考えると偉いみたいな

漢字の装飾、雰囲気に騙されない。

押井:
英語は即物的だから、そういう装飾を施して言葉だけでも
リアリティを生んでしまうという機能が限りなく低い。
コップはコップだしという。でも漢文を並べちゃうと、なんとなく内実があるような
気がしちゃうでしょ、「乾坤一擲(けんこんいってき)」とか。

一同:
(笑)

押井:
乾坤一擲っていっても、英語に翻訳すると、
たぶんものすごく単純な言葉になりますよね。
ガッツ(guts)だとかね。ファイト(fight)って言葉はないんだけど。

岡部:
Decisive war.とか、単純ですよね。

押井:
漢語の文化圏というのは、どうしても言葉のリアリティに負ける。
実務とか実業とか、そういうレベルになると、途端に弱点が出る。
軍務令とか要務令とか言われてる世界においては、
それがあからさまに出てきてしまう。
実に無内容な文章しか書けない
例のミッドウェイのときも、レイテのときもそうだけど、
作戦目的がさっぱり分からない
いっぱい書いてあるんだけど、優先順位すら分からない。
そういう文章を元に戦争をやっちゃったのがそもそもの間違いだと、
そういう説もありますね。
日本語ってやっぱり独特だし、和歌を詠むことが最高の、
インテリの証でもあるし。

岡部:
漢文を読みこなすのとね。

最悪の事態は、みじめな状況?

押井:
日本で考えられる最悪のシナリオは何かを考えてみましょう。
核攻撃は別とすれば、ですけどね。
もし上陸されたとしますよね、可能性としてかなり低いんだけど。
そうすると遅滞戦闘をして大損害を出すことになるから、
たぶん『被害担当師団』みたいなのが間違いなくあると思う。

要するに自衛隊の後詰が出てくるっていうんじゃなくて、
米軍が来るまで体を張る被害担当師団。
遅滞防御しながらどんどん損害が出て。しかもたぶん兵站も備蓄も、
国内の戦場なのにそれほどいい状況だとは思えないから、
後退する部隊は次々と再編成を繰り返しながら、指揮官を取っ替え引っ替え
しながらね、だんだんシンプルに戦うしかなくなってくる。
おそらくそうなるだろう。もしかしたら都市部も占拠されるかもしれない。

岡部:
そうでしょうねえ。

押井:
で、そうなった場合どうやって戦うのか?
ヘリとか地上攻撃機とか入れまくって立体的に戦うなんていうことが
どこまで成立するんだろうか?
僕は結局「個人ががんばるしかない」という局面がいっぱいくるような
気がする。そうすると畑にタコツボ掘って、ロケット一発ずつ渡して
「とにかくがんばれ」と、それしか言えないという
局面があるような気がするんですよ。

岡部:
そうですよね。
コンビニの脇で倒れてる
自動販売機を遮蔽物にして・・・

みたいなそういう戦闘ですよね(笑)

押井:
場合によっては、ガソリンスタンドに爆薬を仕掛けて・・・
とかね、いくらでもあると思うんですよ。
だいたい橋を一発で落とすっていう研究をやってるんだろうか?

岡部:
国交省が許してくれません(笑)

F-22(ラプター)の暗部と手間。

押井:
修理はロッキード・マーティンまで持っていかないとできない
っていう状態で戦争できるかという。

岡部:
修理どころか例えばレーダー警戒装置、まあESMなんですけども。
例えばあれのデータのアップデートをするとか、コンピュータの
アップデートをするのだって、全部アメリカに持って帰らないとできない
って話になりますよ。
あるいはロッキード・マーティンの人に来てもらって、
日本人の知らないところで
やってもらうか(笑)

押井:
ソースコードだけは絶対に明かさない、っていうことでしょ?

岡部:
そこがいちばんの問題でしょうね。F-22のステルス性というのはつまり
自分からはなるべくレーダーを出さないと。
で、ESMだけで敵の種類とかそういうものを識別して、
方向とか距離とかまで識別して、っていうのが狙いなわけです。
そのためにはESMにはしっかりしたデータベースがないとダメなんですよね。
それはつまりアメリカ軍がこの何年、何十年とかけて蓄積してきた情報であって、
それつきでポンと売ってくれるわけもなく・・・

押井:
ロールプレイングゲームの『ドラゴンクエスト』の、
膨大な戦闘シミュレーションを繰り返したダメージ表
っていうのがあるんだよね。
あれは敵モンスターがランダムに出なきゃ面白くないわけだけど、
ランダムに出てなおかつプレイヤーが普通に戦って九割は勝てそう、
という絶妙なレベルね。
あれはあの会社というかあのチームの飯の種なんだよね。
どこにも公表しないし、それを獲得するためにおびただしい
シミュレーションを繰り返してるんだから。
モニターを何百人も使って、何百時間も徹底的にやらせて、その結果作りあげた
表なんだよ。それに従って作ってるからあのゲームバランスがとれる。
それと同じでさ、要するに基礎研究にお金を使ってるわけ。
それは絶対に見せたくない
っていうのはよく分かる。

兵器体系をアメリカに依存し、F-22を買うデメリット

押井:
政治上の選択肢として、アメリカ寄り以外の選択肢はとれない
ということを宣言するようなもんでしょ。

岡部:
だからそれほどの覚悟を決めてからじゃないと買えないというか、
「買うとなるとそれぐらいの覚悟はいるよ?」
と私はいろいろ言ってるんですけどね。

押井:
耐用年数が切れる向こう20年間は
アメリカのおともだちでいなきゃいけない。

岡部:
そういうことです。

押井:
そういう選択を含むわけですね、あれを買うってことは。

岡部:
だから、インド洋の補給艦を引っ込めたら、
F-22の部品が来なくなった

なんていうことがあるかもしれないですよ(笑)

押井:
まあ、嫌がらせもされるだろうね。

押井さんが何度も念押しする、この兵器のコンボ。

押井:
(日本が)台湾海峡を守るということの大前提は、
もちろん核武装をするっていうこと。
それしかあり得ない。正規空母をアメリカ並に運用して、あそこに責任を持つ
なんてことはたぶんそれはできない。だから原潜を本気になって開発するしかない。

岡部:
そうですよね。ああいう空母って走らせるだけで、
一年に200億から300億ぐらいかかりますからねえ。

押井:
そうそうそう、運用するだけでそのぐらい消えていく。
そんな国力はとてもじゃないけど日本にはない。
いま世界中でアメリカしかないよ。

岡部:
で、しかも6000人もあれに乗るわけでしょ?

押井:
そう、だから人件費がすさまじい。

岡部:
6000人っていうと一個護衛隊軍の乗組員を丸々使うことになる。

押井:
それを訓練して、教育して、さらに再教育のシステムを作って。
それを考えたらね、どう考えたってそんなことをできるのはアメリカだけ。
そんな力はヨーロッパのどこの国にもないし、
もちろんロシアにも中国にも未来永劫ない。

岡部:
ええ。

押井:
だから日本がその真似をする必要はない。
僕は軽空母を日本海に並べるべきだと言うのは即応力の問題だけ。
一朝事があったときに最初のストライクが撃てるかどうかであって。

岡部:
それだったら潜水艦と巡航ミサイルっていう組み合わせにしたらどうですか?

押井:
だってやっぱりねえ、空飛ばなきゃダメですよ(笑)
潜水艦って基本的に見えないんだもん。
なんていうか要するに、国民にアピールできない。
「潜水艦がいっぱいあって大丈夫ですから。安心ですよ
と言ってもね、目の前に見えてない。これは大きいよ。

岡部:
大きいですね。

押井:
僕なんか、アメリカがいまでも戦略空軍を持っている理由は
それしかないと思ってるもん。

岡部:
(笑)

押井:
だってそうでしょ? じゃあB-52が実際に何をやったわけ? って話でさ。

岡部:
ええ、そうですよね。B-2(ステルス爆撃機)だったらフットボールの試合のときに
会場の上を飛ぶっていう芸当ができますからねえ。

押井:
そうそう、そういうことができる。

岡部:
原子力潜水艦がサンフランシスコの球場の
沖合に浮上しました」
というだけでは・・・

押井:
浮上航行したとしたところでぜんぜん絵面にならない。

岡部:
そうです(笑)

押井:
タイフーン級の潜水艦を並べてみせたって、やっぱり戦略爆撃機の編隊には
勝てない、絵面的にもね。だから空飛ぶものは必要なんですよ、やっぱり。
最低限。だからそれにはね、日本海だったらもうハリアーで決まり。

岡部:
(笑)

海洋立国日本、地理的都合の良さ

押井:
タイフーンだビゲンだというのもいいなと思うんだけど、
でもやっぱりスホーイだな。
あとはまあ、道楽だと思って
ハリアーを軽空母に四杯分(笑)

岡部:
えーっ(笑)

押井:
絶対役に立つんですから!
でも北朝鮮の工作船とかそういうことを考えたときに、
海上自衛隊とヘリコプターという選択肢はもちろんある。
確かにヘリコプターで十分対処可能だと思うんだけど、でもそこはやっぱり
ハリアーで一直線、というのがいいんですよ。

岡部:
そういうことを考えれば軽空母というのもあり得るかもしれないですね。

押井:
僕は軽空母を別に侵攻戦力と考えているわけではもちろんなくて、
言ってみればコーストガードの延長線上。
たぶんそのぐらい日本は守備範囲は広いから、海上保安庁だけで手に余るのは
もう分かりきってる。でも海上自衛隊の護衛艦をそれにあてるっていうのは、
これは費用対効果ではおいしくないと思う。

岡部:
ハリアーがAIM-9と機関砲を積んで空飛んでれば、
とりあえず向こうの船の上のヘリコプターは・・・

押井:
うん。まったく無力化できるから。

岡部:
だから長距離洋上の偵察機、哨戒機、ここらへんも動きがとれなくなってくるし。

押井:
全部カバーできますよね。だからお得だと思う。
で、軽空母四隻っていうことは基本的には二隻浮かべる。
訓練も兼ねて半分ぐらいに考えておけばいいんじゃないかと。
四隻全部稼働するわけないし、四隻持って三隻稼働させておいて、
一隻は訓練に使うというのでも構わないけれども、
でもやっぱり定期的に大改修すると
考えると、だいたい常時二隻態勢かな。それで二つの海峡はカバーできるから。
それでいいんじゃないかな。

欠陥空母を造ったフランスについて。

押井:
シャルル・ド・ゴール(フランスの原子力空母)が竣工した途端、
ダメ空母だということを証明しちゃったのは、たぶんいろんなことを考えて
造ったんだろうけど、やっぱりトータルデザインがないんだと思う。
なんのためにどうやって使うのか、地中海から出ていく気があるのか
ないのかということも含めて。

岡部:
エレベーターを下げていくと波をかぶっちゃうというのは
大変な騒ぎですよね。
なに考えて空母を造ったんだという。

押井:
飛行甲板の長さが足りなかったとかさ。
だいたいあの原子炉って大丈夫なのかしら?
核兵器を自力で開発したところまでは、まあ大したもんだというかご立派というか。
で、政治的決断とか政治的能力は高いのかもしれないけど、
技術的な話になってくると途端に怪しく
なるというか。あの国って車もダメだし・・・という気がするけどねえ。

日本のアイデンティティ

押井:
日本という国は、いろんな幻想とか迷妄とか、そういうのを取っ払っちゃって、
民意を集中することが可能であれば、何をやってもそこそこいくはずだ
という信頼感は失ってないんですよ、いまだに。
それこそ「日本人は優秀でいざとなれば一年で核ミサイルを造るんだ」とか、
「F-22よりすごい戦闘機をいつか造るんだ」とか、
そういうアホなことは考えないし。
でもこの国の国土をそこそこ守り抜いて、これからも国として生存していくって
いう可能性というか潜在力は十分に持っていると思うよね。
だけどそれを証明しようという意欲もなければ、必要性も感じてない。
要するにサボってるんだよね。いろんな意味でね。

岡部:
そうですね。

押井:
日本人としてのメンタリティとか潜在的なスペックを活かそうっていう動機がない。
そもそも戦争に負けてこのかた、『動機』というものを持ったことがない。
あるとすれば高度経済成長だけ。でも高度経済成長を果たしたけど、
バブルが弾けちゃって。国として目標を失ったんだと思うね、日本人としても。
日本人として自己を実現するっていう人間はたぶん出てこないと思う。

岡部:
面白いのは、日本人って日本人であるアイデンティティを
自分で声高に確立しなくていいじゃないですか。

押井:
それですんじゃうんですよ。

岡部:
ある意味幸いなことに。アメリカのヘリテージ財団の人だったかな?
韓国系アメリカ人の東アジア問題研究家のお姉ちゃんが、いまと言う時代は、
東アジアのいろんな国にとっては「新しいアイデンティティを探している時代だ」
と言っていたんですよ。
中国はああいう経済成長をして、資本主義に組み入って、
大国としてのアイデンティティを求めている。
韓国は軍事政権があって民主化して、北朝鮮の問題を抱えながら
いまでもそういう防共国家から新しいアイデンティティを探していると。

日本はそういう意味で「経済力だけじゃなくて」という新しいアイデンティティを
求められている時代になってきているんだ、と言われると
「ああ、なるほど。そうなのかな」と思いますけど。
確かにいままで日本人っていうのはアイデンティティの問題を外から突きつけられた
ことはないですよね。なんとなく日本人でいられる
何もしなくても日本人でいられる。

押井:
とくに証明しなくてもいい。でも、未来永劫そうなんだろうか? と言うと・・・。

岡部:
そうじゃないんじゃないの? と思うんですけどねえ。

押井:
そういうラッキーな国は歴史上、
他に存在しないと思うんですよ。といって大英帝国みたいなああいうふうな
メンタリティは「持て」って言われても持てないし、持つ必要もないと思うんですよ。

岡部:
ええ。

押井:
同じ島国でもこれだけ違うかってことのほうが多いわけで、
それで言ったら日本人はそうとう変わってると思うよ、やっぱり。
置かれた環境が特殊と言うだけじゃなくて。

ポーランドの例。因縁付け合いのヨーロッパはやっぱり、したたか?

岡部:
ポーランド人なんてどれだけアイデンティティを踏みにじられてきたか(笑)

押井:
あの人たちは、放っておいたら「自分は誰なんだ」って話になっちゃうから。
軍事的なことに対してはみんな好奇心強いし、何かと言うとなんとか記念日だとか、
なんとかパレードだとかしょっちゅうやってて大好きだし、
とにかくポーランドとして自己主張し続けていないと、というのが確実にある。

去年『スカイ・クロラ』のロケハンに行ったときに、
ちょうどF-16が導入されたばかりで、
もうニュースはそれ一色

岡部:
うわあ。

押井:
一日中そのニュースやってんの。
「やっとF-16が来た!」って。
「これでMiG-21ともおさらばだ!」

岡部:
(笑)

       (~中略~)

岡部:
本当にポーランド人なんて、何が欲しいって東西に海峡が欲しいんでしょうね。

押井:
たぶん。

岡部:
ほんのちょっとでもいいから海が欲しい、みたいなことはあると思う。

押井:
国境が50年と安定したことがない
わけだから。そのたびにこっち行ったり、あっち行ったり、またこっち行ったり。
まあそうは言いながら、ポーランドもけっこうやることやってんですよね。
便乗してウクライナ占領してみたりさあ

岡部:
(笑)

押井: やっぱりさすがはヨーロッパ、一瞬の隙も見逃さない。
ちょっとこいつ弱ってるな、と思ったらすかさず
入り込んじゃう。「千何百年前はウチの国だった」って言えば
どこだって言えるんだから。

一同:
(笑)

潜水艦の良いトコ。悪いトコ。

岡部:
この間キティホークが香港に入港拒否されたんでアメリカが怒ってますけど、
どうやらダライ・ラマにメダルをあげた
のの意趣返しだっていう話があって、
その前からしょっちゅうアメリカの空母は香港に出入りしてるんですよね。

しかも去年だったか一昨年だったか、天安門記念日のちょっと前の香港の選挙の
間近にエイブラハム・リンカーンかなんかが入ってるんですよ。
それって香港の民主派にしてみれば「天安門前にアメリカの空母が!」という、
すごいインパクトですよね。
しかも空母って港を見れば必ず目に入る
じゃないですか。
他のどの船よりデカいし、あれはやっぱり潜水艦が一隻、真っ黒なまんま
桟橋についてても絶対ダメですね、そういう意味じゃね。

押井:
そうだね。「なにそれ?」って感じだもんね。

岡部:
だからやっぱり潜水艦ってのは見せても意味ないですね。
やっぱりあれはふだん見えないところに意味がある。

押井:
あると言いはるだけでいいんだよ。
時々あるふりをしてれば(笑)

岡部:
そうそう。あるふりができるという。
フォークランド紛争のときのアルゼンチン海軍みたいに。

押井:
本当にいたのかな? って。

岡部:
いちおう『ジェーン年鑑』のアルゼンチン海軍のページに「潜水艦」
って書いてあるだけで、イギリス海軍はあれだけ対潜警戒網を張らなきゃ
ならなかったという。

首都攻撃かと思わせて、フェイクをかまされる?

押井:
日本海側には戦力目標が何もないから素通りして東京に押し寄せてくる、
と思ってるかもしれないけどじつは山盛りなんだからね。
原発の六割が日本海側にある
それが気になって気になってしょうがない。

これをやられちゃったらテポドンが落っこちてくる以上のことになる
わけじゃない。だからそれを本当にちゃんと守れるのかしらと。
何を考えてあんなに日本海側にいっぱい作ったんだろう。

岡部:
とくに夏場の暑い時期に日本海側の原発を制圧されて、東京に電力が行かない、
クーラーも全部止まる。そうすると「暑いからもう降伏してよ」って、
そういう世論になっちゃうかもしれない(笑)

一同:
(笑)

押井:
「とりあえずなんとか手打ちできないか」とかね。
「対馬あたりでうまく帳尻合わないかしら」とか言われたら
たまんないからさ。
だからそれを考えると、軽空母でハリアーで機関砲で撃ちまくるというのが
意外といいのかなと思った。

中国がイヤがる事。

押井:
中国は「金持ってるところがいつでも独立するぞ」という危機感を持ってる。
それをさせないためにあらゆる努力をしてるんだから。
ましてやそういう国が空軍だ海軍だというのは、どう考えても持てるとは思えない、
人民解放軍は成立してるけど。

岡部:
いまのところ中国はみんなお金儲けという求心力でひとつになってますけどね。

押井:
それがうまくいかなくなったらどうなるか。
要するに沿岸部はみんな自治区になりたいわけだ。
みんな独立したいわけ。内陸部の貧乏人を抱え込むのは絶対イヤ。
もともとそういう国民的な意思統一ってないんだもん。

岡部:
ましてや北京中央政府の役人にあれこれ指図されるとか、
賄賂を払わなきゃならない
なんていうのはもっとイヤなはず。

将来はイイトコ取りの日本鎖国

押井:
日本人っていうのは基本的にこの島にこもってね、
みんな同じような顔した人間同士で
なんとなく仲良くやっていこうぜ
っていうのがいちばん合ってるし、本心を言えばそれしかないんだもん。
「世界のお役に立ちたい」とか、そんなのは・・・

岡部:
ウソウソ。

――:
(笑)

岡部:
だって世界が分かってないから。

押井:
そうそう(笑)

岡部:
「どういう役に立つか」ということすら分かってないですよ、たぶん。

押井:
島にこもって自給自足やって、たまにお客さんが来たら歓迎するよ、という、
それがいちばん合ってると思う。だから将来はスペースコロニーだと言ってるんだ。

アホのな政治家と官僚どもは、もっと兵器のお勉強を。

押井:
本当にあの人たちはものを知らないからね。
ふだんは外交でいいところ見せるために足も切り捨て、爆撃能力も切り捨て、
爆撃照準機も積んでません、って目いっぱいアピールして。

岡部:
しかもそれ、「外交的にいいところを見せる」って言うけど、
それがいいところだと思ってるのは日本人だけですからね。

押井:
じつは逆なんだ。そういうことをやってるからつけ上がる。
だったら飛行機を持つ意味がないじゃない。
「いざとなったら爆撃できるんだぜ」
ってアピールのために飛行機を買うんであって、お互いにそれを、
いわば留保し合ってることが、言ってみれば戦争の抑止そのもので。
依然として発想の根本はそこにあるんだよ。

撃ってきたらなんとかしようという発想で、
ものすごい国防予算を組んで「絶対全部撃墜してみせます。
テポドン一発に対してPAC-3を100発用意してあります」って、
そんなバカなことはできないわけだ。そんなものはなんの役にも立たない。
そんなのに税金使ったらさすがに黙っていられないね。
だからそういうことをやめようよって話なんだよね、単純に。
どう考えたって曲芸だもん。クレー射撃より難しい。
射撃やってるから思うんだけど、動いてる目標に当てるって別次元だからね。

機能美としての兵器デザイン

押井:
銃や戦闘機のデザインというのは、やる気が出るかどうかというのが
じつは重要な要素としてあるから。
これは僕が言ってるんじゃなくて、
有名な飛行機の設計をやってた人が本で書いてた。
戦闘機のデザインというのは、乗って勝てそうな予感がするかどうかが
やっぱり大事なんだって。

岡部:
ああ、佐貫亦男さんですね。

       (~中略~)

押井:
でもたぶんね。勝利の予感がする戦闘機というのはあるんだよ。
スピットファイアはまさにそう。ドイツ軍だってメッサーシュミットがなかったら
あそこまでイケイケでいったかどうか分からない。
メッサーシュミットであるがゆえに戦争がデカくなっちゃった。

岡部:
(笑)

押井:
確かにそういう意味で言えばね、あのデザインはそういう好戦意欲をそそる。
フォッケのほうが妙になじんでて好きなんだけど、まったりしてて。

岡部:
メッサーの109と110と、それからスツーカとユンカースの88があったら
「これだったらモスクワを陥とせる!」
と思いますよね。

押井:
「勝てそう!」って感じ。

軍事がアニメや映画を模倣する

押井:
実際の軍隊とかさ、実際の戦場ってそういうふうに、
どこかしら虚構を模倣する
現実が虚構を模倣するんだっていうことはむしろ戦闘とか軍事とかいう世界では
どちらかと言うと当たり前で、「日本だったら巨大ロボを開発するんだ!」という
オヤジが出てきてもおかしくないと思ってるよ。

あれもこれも。の大弊害。

押井:
さあ造ろうっていうときにみんな冷静になるんだよね。
実際に予算をかけていざ造ろうと思うと
「うーん、あれもやれるようにしとこう。これもやれるようにしとこう」って。
そうすると岡部さんの連載(世界の駄っ作機)みたいに、
イギリス空軍当局の要求仕様みたいな「あれもこれも、これもあれも・・・」という(笑)

岡部:
(笑)

押井:
結果としてとんでもないものが出来あがる。駄作機の世界というのは
たぶん現実過程の反映だと思う。
そうじゃないものに関してはいわゆる超兵器なんだという、
成功したものはひと握りしかないんだけど、
それは妄想の体系が生んだものであって、
極端な単用途極端な汎用性
というのはじつは同じようなものなんだよ。
どちらもある種の妄想の体系。
それがいまだにやっぱり横行してるし、たぶんなくならない。
なくならないからこそ僕らがやってるアニメーションは正体不明の兵器を量産して、
飯の種になってる。それは三連砲塔の戦車みたいなものと本質的に変わらない。

映画やアニメのイメージに引きずられる現実の戦争

押井:
政治家とかジャーナリストとか、そういった人間たちを含めて、
戦争を語ろうとする人間たちは意外にそういうふうなものに無防備だったりする。
どこまでが妄想で、どこまでが現実なのか。
戦争というのはたぶんその現実と妄想の中間にある。
ある局面では妄想は有効だったり、妄想ゆえに敗北したり。

軍人たちは戦争に対して常に現実的であろうとするんだけどさ。おそらく政治家も。
政治家なんて戦争をいちばん現実化したい人間の最たるものだよね。
マクナマラがやった戦争がそうだったから。
彼は戦争を現実化する努力をした。その努力の中身は何かと言ったら、
現実化するために「数値化」したんだよね。
彼はマーケティングの専門家、ビジネスマンだったから、戦争を現実化するための
唯一の方法は数値化することだって思いついたんだよね。
これが結局ベトナムのアメリカ軍の苦戦を招いた、間違いなく。

       (~中略~)

誰だってそういう「戦争を現実化したい」という願望と、
「妄想の戦争で勝ちたい」という願望の間で絶えず揺れ動いている。
どんな高級軍人だろうと、優れた政治家だろうと、一国民であろうと、
“これ”から自由であり得ない。
経済の世界とか他の世界でそういうことがあるのかどうか知らないけど、
戦争だけは別世界だよいまだに。
どこかしら妄想の上に成立している。
たぶん日本の自衛隊もその妄想から自由じゃない。
空自の正面装備願望というか、
「とりあえずアメリカ軍と同じ戦闘機が欲しい
という。

岡部:
(笑)

押井:
なんでそうなるのかなあ。少しは違ったこと考えればいいじゃん
とか思うけど。そうすると、現実的じゃないって話になるんだよね。
だったらその「現実」ってなんなんだよ
って話なんだよ。
「どういう戦争を想定してるのか」という話から始めると、けっこう曖昧になってくる。
別に僕が言ってることが全部正しいとは思わないけどもさ、
そういう部分もあることは確かであって。

       (~中略~)

押井:
ランカスターみたいな大型のバスみたいな爆撃機でも、
あれで何千機で編隊組んで飛んできたら勝つに決まってる。
たとえそれで何万人死んでもいいという覚悟があれば、だけどさ。
戦争ってそういうもんじゃん。
現実原則だけで勝った戦争もないし、
妄想だけで勝った戦争もない。

現実の戦争を担った歴史上の人間たち、おそらく現在もそうだけど、
みんな現実と妄想のその間で右往左往してる、
振りまわされてるという。戦争を克服した人間はおそらくいない。

お互いの温度差を解決する前に、同じ妄想に浸っていないか確認する。

押井:
『航空ファン』とかの議論を見てても、何か違う気がするんだよね。
岡部さんも書いてたけど、それぞれの論者の考える戦争のリアリティと
いうのが、微妙にみんなあきらかに温度差があるんだよ。

岡部:
ええ。

押井:
「どんなに高くても必要なものは買うべきだ」と言う人には、
それはやっぱり現実感覚に裏打ちされてるという自信があるんだよね。
「あんなものは高いだけだ。もっとお利口な調達をするべきだ」と言う人は、
逆の意味の経済原則という現実を自分は獲得してると思ってるわけだよね。
だからどちらも正しいんだよ。
だけどもしかしたら同じ妄想の中にいるのかもしれない。
日本人自体がそもそもそれ以前に戦争から疎外されているからで、
戦争を現実化できていない。

近代の戦争によってどの国に、利益が舞い込んだのか?

押井:
ノルマンディー上陸以降というのは、本当に意味があったんだろうか?
あとはアメリカにまかせときゃよかったんだ、という説もあるし。
ただアメリカはやらなかったかもしれないけど(笑)

あの戦争でイギリスが得たものってなんだったんだろうと。
冷静に考えれば、植民地を失っただけ。
じゃあアメリカが第二次大戦で手に入れたものは何か。
肝心の中国市場は共産軍の内戦で全部パーになっちゃった。
結局なにひとつ手に入れられなかった。
それでフィリピンも最終的に手放すことになった。

岡部:
世界最大の海軍国になって、世界中の海洋は支配したけども。

押井:
同時に世界最大の地上軍を作ったソ連も、そうであるがゆえに
結局あれから50年経って破産した。史上最大の地上軍を作っちゃったからね。

岡部:
東ヨーロッパの諸国を手下に抑えておくのにあれだけ苦労して(笑)

押井:
結果的にその最大の地上軍を持ちきれなくて崩壊した。
あれ、やめられなかったんだよね。本当は独ソ戦が終わったときに全部解体して、
帰郷させればよかったのかもしれない。
だけどそうすると東欧に残せなかった。東欧を自分の手にできなかった。
自分の領土的な野心に負けたんだよ。
経済性から言ったら、東欧を手に入れたからって
何か有利になることがあったのかと。
東欧に油田はあったけど、別に自前の油田に不自由してないし、炭田もあるし。
なんの意味があったんだろう?
だから史上最大の地上軍を持ったがゆえに国自体が破産した。
結局半世紀もやめられなかった。

岡部:
アメリカだって結局、フランスやイギリスから自分たちの植民地支配の後始末を
全部押しつけられたわけですもんね。
ベトナムといい、中東といい、貧乏クジ引きっぱなし

押井:
フランス人の後始末をするのに30年かかった。
結局、誰が得したんだろうと考えると、
たぶん旧植民地のアジア・・・しいて言えば。あと毛沢東、それだけじゃん。
とりあえず共産中国は成立した。
しばらく冷戦の時代は全部、第二次大戦の成果物だった。
じつは社会主義自体が、イデオロギーで勝ったわけじゃなくて、
戦争で獲得したものだからね。
キューバもアフリカも中国も。逆にいまとなっては何も残っていない。
キューバだけはいまだになんとかやってるけど。

だから戦争で何かを得た国なんてひとつもない。
日本なんてコテンパンにやられたけど、とりあえずは冷戦のおかげでここまで
経済成長した、小ずるく。
小ずるくかどうかは分からないけど、あえて言えばね。
戦前よりもリッチになっちゃった。こんなバカな話があるかという。
だから戦争って本当につくづく不思議なものだと思うよ。